VOICE・1



私は長年原因不明の発熱を繰り返していましたが、昨年ようやく原因がわかりました。
家族性地中海熱という今まで聞いたことのない病気でした。
それも不完全型と言われるもので一般的な典型例の地中海熱と違って症状が多く、診断が難しい、あまりまだよく解明されていない病気でした。

私は診断がつくまでの16年という長い間何度もいくつもの病院を受診し、そのたびに「心気症ではないか?」「ストレスが原因ではないか?」と言われ続けてきました。
また「自然に解熱したり症状が消えるなら問題ない」と言われたり、「本当は熱出てないんじゃないの?」「そんな症状が本当に出るのなら見せてもらいたいくらい」とまるで私が嘘をついているかのような心無い発言を繰り返し受けてきました。
その度に「あんなに痛いのにどうして信じてくれないのか?」「嘘じゃないのに」と悔しくて悔しくて不信感だけが募っていきました。
そしてついに極度の医療不信に陥り、どんなに痛みがあっても、どんなに苦しくても「どうせ誰も信じてくれない」と絶対病院には行かなくなりました。
医療不信に陥っていた11年間、ずっと一人で耐えてきました。
40度近くまで達する急な発熱、腹痛、そして胸の痛み、関節痛などを繰り返すたびに本当に不安で恐かった。
怖くて怖くて、でもそれ以上に信じてもらえない辛さが心の傷となりどうしても受診する事が出来ませんでした。

「ありえない」と言われるたびに「どうして信じてくれないのか?!」
ありえないと思う前にあり得るかもしれないとどうして考えてくれないのか?
ありえないと言ってしまったらそこですべてが終わり、進むこともどうすることもできないのにどうして医者は簡単に「ありえない」の一言で片づけてしまうのか?
「ありえない=精神的なもの」とすぐ結論づけてしまうのか?
信じてくれないなら、こちらも信じない。
診てくれないのなら、それで結構。
ずっとそう思っていました。

十数年経ち、やっと本当にそんな事が起こるのだと信じてもらえて自己炎症疾患という病気にたどり着いてもあまり状況は変わらず・・・
相変わらず「ありえない」と言い切ってしまう現場の医師
診断がついたらついたで「ガイドラインにはそんなことは書いていないので、それは症状ではない。精神的なものではないか?」という医師もいて「ガイドラインではなく、論文でもなく患者である私自身をみてほしい」と何度も思いました。

自己炎症疾患を患う患者に対して「ありえない」という言葉は言ってはいけない言葉だと思います。
ありえないと思われていたことが実際私達患者の体内では起こっているからです。
また「自然に治るならいい、何が問題なんですか?」これも何度も何度も言われてきた言葉ですが、これも医師患者間の溝を深める言葉だと思います。
確かに時間はかかりますが痛みも発熱も自然に治ります。
でも繰り返す炎症発作を前に不安、恐怖は消えることはありません。

私は自分自身の経験を通して診断がついたから終わりではなく、診断がついてようやくそこから始まるのだという事を実感しました。
まだまだ未知の病気である為に臨床の現場の先生方にはガイドライン通りに薬が効き、ガイドライン通りに症状が出たり収まったりすると思われがちですが決してそうではない事、病気より個人を診ることで自己炎症というものを知ってほしい。
研究者の先生方には「遺伝子検査で診断がついた=各医療の現場で適切な治療が行われているわけではない」こと、各医師によってガイドラインの解釈も疾患や薬に対する考え方も全く違う為、同じ病気でも主治医によって治療や経過が全く違ってきてしまう事などをぜひとも知ってほしいと思います。

自己炎症疾患という病気がもっと知られるようになって、同病者の方が私のように十数年も苦しまないで済むように。
「ありえない」ような病気があるのだという事を念頭に置いてもっと私達患者を信じて向き合ってくれますように、祈ってます。

(家族性地中海熱不完全型 ・ 女性)