VOICE・2


 TRAPS患者です。私は15歳の時に病気を発症したのですが、昔のことといえば頭の中は強烈な痛みと悪寒と高熱で一杯ですので、成人してからの悩みを書いてみようと思います。 

私は10年以上にわたりステロイドのみで治療を行っており、他の免疫抑制剤を試すことができたらなぁと思うと、他の免疫疾患の患者さんのことがうらやましかったです。「××病だったら、もっと色々な治療選択肢があるのに…」頭の中はそのことで一杯でした。「発熱だけだし臓器障害はないから大したことはない」と言われ、よい薬があるのに使ってもらえないことは、本当にくやしかったです。「あの薬を使うことができれば、もしかしたら私だって健康になれるんじゃないか。もし他の薬も使っていれば、今ほど症状が悪化することもなく、副作用も軽く済んだんじゃないか。」ふとこう思う瞬間があります。そう思う度に、夢物語を描いていても空しいだけだと馬鹿馬鹿しく思え、一縷の望みを抱いている自分に腹が立ちました。いつしか、治ることを期待してはいけないと思うようになり、病気について原因や治療法を探して気を揉むのはやめることにしました。熱が出れば解熱するまでステロイドを飲む、ただただそのことに専念しました。通院も1年間隔に延ばして、薬が無くなったら病院に連絡して処方箋を書いて貰いました。病気について考えないということは、当時の私の心を守ってくれる唯一の手段だったのです。

母はそれでもなお諦めきれずにいたようで、東は東京、西は大阪まで、セカンドオピニオンを求めて私を呼び出してはセカンドオピニオンを求めてさまよい歩きました。その度に「異常はありません。あなたは病気ではありません。」と言われることも多く、疲労と空しさが募りました。「労力もお金も無駄だからほっといて欲しい」と、何度も母を説得しました。今振り返ると、自覚はありませんでしたが、直視できない辛い現実だったのではないかと思います。病気のことは考えたくなかったのだと思います。本心は、せめて原因だけでも解明して欲しい、そう思っていたのに。

現在の主治医にお会いしたのは、今からちょうど2年前。検査入院で高熱で意識がもうろうとしていた私の手を、気付いたら先生が握っていました。その当時の私にとって、先生の仕草や「決して見捨てない」という言葉は、神経を逆撫でするものでしかありませんでした。酷い医療不信が根強くはびこり、暴言を吐いては皆を困らせました。何人かの先生と大げんかもしました。それでもなお、根気強く私を気遣って治療を続けてくれる先生の姿を見て、今ようやく人を信じるということを思い出せそうな気がしています。主治医、患者仲間、家族、友人、沢山の人たちに支えられていると胸を張って断言できそうです。ほんとうに、患者会の仲間と支援をしてくださる先生方に出会えたことは、本当に夢物語のようです。



(TNF受容体関連周期性症候群(TRAPS) ・ 女性)



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 TRAPSと診断された娘を持つ母親です。忘れもしませんが、娘は高校入学後すぐ、突然の高熱に襲われました。私はフルタイムで働く母親で、娘は幼少の頃は殆ど病気をせずに育ったので、歓送迎会の時期、夜の会合に参加していた私に「高熱を出して、首が痛いと泣いている」という父親からの電話は、娘に何が起こったのか正直理解ができませんでした。そして、「痛い、痛い」と訴える娘に、「それは喉やろ」と決めつけ、ここから耳鼻科巡りが始まりました。そして、この「喉だ、扁桃腺炎だ」という素人知識は、結局、娘に扁桃全摘という手術を受けさせることにもなりました。大学受験が近づいてくるということで高校2年生の年末に受けた手術ですが、かわいそうに退院というときに発熱して、 やっと医療関係者も「おかしい」と血液内科にカルテが渡ることになったのです。その示唆をしてくれたのが友人の小児科医で、娘に処方されていた点滴に「リンデロン」を見つけて、「小児科医は普通使わない薬だ」と言ったのです。娘の高熱が町の耳鼻科にかかりうそのようによくなったのは「ステロイド」の薬効だったのだとそのときは分かるはずもありませんでした。しかし、町医者から依頼をうけ、扁桃の執刀に携わってくださった耳鼻科医の先生が謙虚に「これは違う」と認め、血液内科に相談をしてくださったことが、まだ、最速で病気の核心へ近づく手立てになったのだろうと思います。高校を卒業し、故郷を離れる時には、「成人スティル病」ということでカルテを移していただきました。そこから「 自己炎症疾患の一つでTRAPS」と確定されるまで10年の月日を経過しています。娘は「ステロイド」によってスキッと復活することで、周りからは「サボり」ではと思われていないかといつも気がかりだったようです。そして、10年ステロイドを使い続けた結果、当然出てくる不具合に今、悩んでいます。これからの医学の発展に期待するわけですが、ただ、チャレンジする薬が非常に高額であったり、治療を受けるのに様々なハードルがあることは家族としてとてももどかしいです。

 稀少な疾患である故に、周りに理解されず、しかも、治療手立てが少ないということで孤立感を深める立場ですが、それだけにこうして、患者同士つながり合おうという企画は家族としても、とても心強く思っています。どうそ、よろしくおねがいします。


(ご家族様より)