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A20ハプロ不全症

 

A20ハプロ不全症とは

A20ハプロ不全症はタンパク質A20の機能異常により、炎症性サイトカインであるTNF-α、IL-6、IL-1β等が過剰産生され、反復性口腔内アフタ(無痛性)、発熱、関節痛、消化管潰瘍等のベーチェット病類似症状を若年で発症する。以前は「家族性ベーチェット病」と呼ばれ、家族性地中海熱やベーチェット病と診断されている患者さんもいました。
   

原因

A20ハプロ不全症はTNFAIP3遺伝子がコードするA20の機能低下変異(ハプロ不全)により常染色体優性遺伝形式で発症する。A20はTNF-αの細胞内シグナル伝達経路上に存在し、このシグナル伝達を抑制的に制御している分子です。A20ハプロ不全症においてはTNFAIP3遺伝子のヘテロ接合性変異によりA20の半量不全が生じ、TNF-αシグナル伝達の異常が起こることで種々の炎症性サイトカインが過剰産生され炎症が惹起されます
  

症状

A20ハプロ不全症は、新生児期から20歳頃までの若年期に発症します。重症度は症例ごとに異なりますが周期性発熱あるいは遷延性の発熱、反復性口腔内アフタ、皮疹、関節痛に加え、外陰部潰瘍、消化管潰瘍、ぶどう膜炎といったベーチェット病様の症状を呈します。生涯にわたり炎症が持続し、臓器障害が進行しますまた橋本病や全身性エリテマトーデス、自己免疫性肝炎等の自己免疫疾患の併発もみられます。

1:反復性発熱
2:反復性口腔内アフタ
3:下痢、血便等の消化管症状
4:外陰部潰瘍
5:関節炎
6:皮疹(毛嚢炎様皮疹、?瘡様皮疹、結節性紅斑様皮疹など)
7:眼症状(虹彩毛様体炎、網膜ぶどう膜炎など)
8:自己免疫疾患症状(自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性肝炎など
  

診断


  

検査

1:炎症所見陽性
2:便潜血陽性
3:針反応試験陽性
   

重症度分類

<重症度分類> 機能的評価:Barthel Index 85 点以下を対象とする。 質問内容 点数 1 食事 自立、自助具などの装着可、標準的時間内に食べ終える 10 部分介助(たとえば、おかずを切って細かくしてもらう) 5 全介助 0 2 車椅子 からベッ ドへの 移動 自立、ブレーキ、フットレストの操作も含む(歩行自立も含む) 15 軽度の部分介助または監視を要する 10 座ることは可能であるがほぼ全介助 5 全介助または不可能 0 3 整容 自立(洗面、整髪、歯磨き、ひげ剃り) 5 部分介助または不可能 0 4 トイレ動 作 自立(衣服の操作、後始末を含む、ポータブル便器などを使用している場合はそ の洗浄も含む) 10 部分介助、体を支える、衣服、後始末に介助を要する 5 全介助または不可能 0 5 入浴 自立 5 部分介助または不可能 0 6 歩行 45m以上の歩行、補装具(車椅子、歩行器は除く)の使用の有無は問わず 15 45m以上の介助歩行、歩行器の使用を含む 10 歩行不能の場合、車椅子にて 45m以上の操作可能 5 上記以外 0 7 階段昇 降 自立、手すりなどの使用の有無は問わない 10 介助または監視を要する 5 不能 0 8 着替え 自立、靴、ファスナー、装具の着脱を含む 10 部分介助、標準的な時間内、半分以上は自分で行える 5 上記以外 0 9 排便コ ントロー ル 失禁なし、浣腸、坐薬の取り扱いも可能 10 ときに失禁あり、浣腸、坐薬の取り扱いに介助を要する者も含む 5 上記以外 0 10 排尿コ ントロー ル 失禁なし、収尿器の取り扱いも可能 10 ときに失禁あり、収尿器の取り扱いに介助を要する者も含む 5 上記以外 0 8 ※診断基準及び重症度分類の適応における留意事項 1.病名診断に用いる臨床症状、検査所見等に関して、診断基準上に特段の規定がない場合には、いず れの時期のものを用いても差し支えない(ただし、当該疾病の経過を示す臨床症状等であって、確 認可能なものに限る)。 2.治療開始後における重症度分類については、適切な医学的管理の下で治療が行われている状態であ って、直近6ヵ月間で最も悪い状態を医師が判断することとする。 3.なお、症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが、高額な医療を継続す ることが必要な者については、医療費助成の対象とする。
   

治療

A20ハプロ不全症は副腎皮質ステロイド全身投与、コルヒチン、抗TNF製剤などの使用が報告されていますが有効性は確立していません。また治療抵抗性腸管炎症に対して腸管切除、難治性自己免疫疾患に対しては骨髄移植がなされています。一部の症例では抗IL-1製剤の有効性が報告されています

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