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自己炎症性疾患と遺伝子検査

 

遺伝子検査とは

 自己炎症疾患の診断には各疾患毎の特徴的な症状・検査数値からなる臨床診断と、疾患ごとの原因遺伝子の変異を調べる遺伝子検査があります。生まれつきある遺伝子に病気の原因となるような構造がある場合、臨床的遺伝子診断が有効となります。また臨床診断がはっきりついていない場合は、遺伝子検査が診断確定への補助となります。臨床的遺伝子診断は原因遺伝子が確定しているなど検査を行う意義がある程度確立している遺伝子診断であり診断結果を患者・家族に役立てる事を第一の目的として行われる検査です。遺伝子解析の結果は患者・家族・血縁者に大きな影響を与えうる為、事前の説明に当たっては患者本人が検査の特殊性を十分に理解し、同意・承諾した上で行われることが重要となってきます。

   

遺伝子検査を受ける前に

遺伝子検査を受けるかどうかは任意であり、取り消しも自由です
遺伝子検査を受けるかどうかは自由意思で決めることになります。誰かに強要されて行うものではありません。メリット・デメリットを十分に理解した上で行ってください。  

事前に遺伝子検査を受ける事によるメリット・デメリットを確認してください!
自己炎症疾患は遺伝疾患です。その結果は患者本人だけでなく家族・血縁者にも関係してきます。「なんの病気かはっきりする」「治療法が見つかる」といったメリットだけではなく「遺伝疾患ゆえの社会的差別が生じる可能性」「血縁関係を前提に行う事が多いために生じる問題」等様々な問題が生じる可能性もある事を知っておく必要があります。検査前に事前に説明を受け、質問、不安は解消するようにしてください!医療機関によっては主治医からの説明だけでなく、事前に遺伝カウンセリングを受ける事が義務づけられています。


遺伝子検査の結果は究極の個人情報です!
遺伝子解析の結果は様々な問題を引き起こす可能性があります。他人に漏れないように個人情報保護法に基づき慎重な取り扱いがなされます。解析開始前に採取された検体や診療情報からは住所・氏名を削除し匿名化されます。その後にイニシャルなどを含んだ新しい符号がつけられる事により患者の特定を不可能にします。この符号と患者本人の対応表は検査を行った病院で管理担当医師が厳重によって厳重に管理・保管されます。個人情報を保護することは刑法で定められた義務です。なかでも遺伝情報は最も厳重に管理され、診断を実施したという事実、遺伝カウンセリングに関するカルテは他のカルテとは別に厳重管理されます。また検査結果は患者本人の希望により開示されます。



  

遺伝子検査を受けることでのメリット・デメリット

当事者・患者家族がまず理解しておかなくてはいけない事は病気の診断が臨床的にはっきりしている場合、遺伝子構造の変異が見つかる・見つからないという事がそれまでの診断や治療を左右するという事にはならないという事です。
遺伝子検査はあくまでも診断の一つの方法です。変異が見つかった場合はより正確な診断の確定となり最も適していると考えられる治療法を選択して治療を行う事になります。ただし変異が見つからなかった場合でも患者本人が遺伝性の疾患である事の否定にはなりません。なぜなら疾患とそのタイプによっては変異が出にくい・出ない可能性もあるからです。もし変異が見つからなかった場合は、検査前と同じ状況はかわりません。これまで行われていた診断方法に基づき、現在行われている標準的な治療法の継続、選択をして治療を行っていきます。

考えうるメリット
1)早期発見が可能になる
2)正確な診断が可能となり、それに基づく予防・治療を開始できる
3)最適な時期での最適な治療法の選択ができる
4)血縁者や子孫に受け継がれる疾患の早期発見と予防を講じる事が可能
5)今後の可能性のある症状を事前に知る事で予防的措置を取る事が出来る
6)将来への心構え・プランがたてられる
7)家族計画の決定
8)遺伝への不安軽減
9)不必要な処置・治療を避けられる
10)解析結果が今後の医療の発展・治療の進展・診断の確立に役立つ事がある

考えうるデメリット
1)将来が予測されることによる重圧・精神的ダメージ
2)遺伝疾患という事により家族間での摩擦
3)遺伝疾患というイメージによる社会的差別を受ける可能性
4)就職・結婚・妊娠への障害になる可能性
5)保険加入時の審査が通らない(または通りにくい)
6)その他、倫理的・法的・社会的問題が生じる可能性がある
7)結果が出なかった時の喪失感
8)意図せずに血縁関係を否定される可能性
9)子孫への遺伝の可能性がわかってしまう
10)家族計画に関して家族から賛同を得られない可能性
11)不安・「原因は自分にある」という罪悪感の増加
12)自己イメージのネガティブな変貌
13)解析結果が研究などに使用される

  

遺伝子検査を受けない事によるメリット・デメリット

 遺伝子検査を受けない場合は症状や一般検査などから推測された臨床的診断による診断名がつけられます。遺伝子変異の有無で「どういう経過が起こるのか」「症状が起こりやすいのか」「どういう治療がいいのか」などがはっきりとわかるのであれば治療法を選択する上では情報が多い方が有利となります。また従来の方法では診断がつかない患者にとっては、診断が確定しないままで症状・経過観察をすることとなり、治療の選択肢が限られる可能性があります。

遺伝子診断を受けないことによるメリットは診療上は特にないと思われます。

遺伝子診断を受けない事で検査を受けた時のデメリットや新たな問題を回避することが出来ます。

 遺伝子診断の結果を知った時のデメリットを考えて「知らない方が幸せ」と考え、検査を受けないという結論を出す人も少なくありません。家族・血縁者ともよく相談した上で、診断を受けるか受けないか決めてください。
結果は患者本人だけでなく家族・血縁者にも影響します。診断を受ける前に十分な話し合いを行ってください。決定するのはあくまでも本人であり、診断は本人の自由意思に基づいて行われるべきものです。
  

遺伝子検査の方法

 治療開始前の採血の際に通常の方法で採取します。必要な血液量は5〜10mlと少量で、この採血に伴う危険性はほとんどありません。採取した検体からDNAとRNAを取り出し、病気の原因となっていると考えられる候補遺伝子の塩基配列を解析します。検査結果が出るまでには最短でも2週間以上はかかります。
   

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遺伝子解析の結果の伝え方

 遺伝子診断の結果についての説明は、本人が望んだ場合に本人に対して行われます。例え家族に対しても本人の承諾または依頼なしに結果が知れることはありません。患者本人が未成年の場合には基本的に代諾者(保護者)に結果が説明されますが、本人が説明を求める場合は本人の意向が尊重されます。もし本人が説明を受けなくても、成人後に説明を希望する場合は代諾者の承認なしでの説明が可能です。

結果解析の公表

 遺伝子解析の結果は、今後の診断・治療・医療の発展に役立つ可能性があります。その場合は個人情報が明らかにならないようにしたうえで、学会や学術雑誌およびデータベース上等で公表される事があります。

IRUD(未診断疾患イニシアチブ)

IRUDは遺伝子を調べることで診断の手がかりを見つけ、全国の病院と情報共有して治療法の開発につなげる患者さん参加型のプロジェクトです。

詳しくは「IRUD」公式ページをご参照ください

コラム

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