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中条-西村症候群

 

中条-西村症候群とは

 幼児期から発症する慢性反復性の炎症、発熱を特徴とする自己炎症疾患です。凍瘡様皮疹発症、結節性紅斑様皮疹、脂肪組織炎を認め、次第に長く節くれ立った指、関節拘縮、顔面と上肢を主体とする部分的脂肪筋肉萎縮が進行します。脂肪異栄養症および発熱を伴う慢性非典型的好中球性皮膚疾患症候群(Chronic Atypical Neutrophilic Dermatosis with Lipodystrophy and Elevated Temperature Syndrome :CANDLE Syndrome), あるいは関節拘縮、筋委縮、小球性貧血、脂肪異栄養症誘因性脂肪織炎(Joint contractures, Muscle atrophy, Microcytic Anemia, and Panniculitis Induced Lipodystrophy:JMP)と同一疾患になります。1939年の中條、1950年の西村らの報告以来、「凍瘡を合併する骨骨膜症」などの病名で、和歌山・泉南を中心とした関西と関東・東北から、これまでに30例ほどの報告があります
   

原因

PSMB8遺伝子の変異により、細胞内で蛋白質分解を行うプロテアソーム複合体の機能が低下することによって発症すると考えられていますが詳しいメカニズムは不明です
  

症状

 CANDLE症候群は、乳児期や幼児期には反復性発熱で発症します。紫斑性の皮疹が出現し、唇が厚く、紫色に腫脹した眼瞼、顔面の脂肪の喪失といった顔つきが特徴となります。また、関節炎を伴わない関節痛、結膜炎、結節性上強膜炎、軟骨炎、無菌性髄膜炎などを合併することがあります。徐々に肝臓が肥大し、軽度の肝障害、貧血、筋肉量および末梢性の脂肪の減少します。末期には関節拘縮や不整脈を認めます。  中條-西村症候群の報告では、幼少児期に手足の凍瘡様皮疹にて発症する場合が多く、その後結節性紅斑様皮疹が全身に出没したり、周期性発熱や筋炎症状を繰り返すようになります。早期より大脳基底核の石灰化を伴いますが、成長発達障害ははっきりしません。次第に特徴的な長く節くれ立った指、顔面、上肢を主体とする部分的脂肪筋肉萎縮、やせが進行して手指や肘関節の屈曲拘縮を来す場合があります。LDH、CPK、CRP や血清アミロイドAが陽性で抗核抗体も陽性になることがあります。一方、ステロイド内服により、腹部や下半身の肥満を来す場合もあります。
  

治療

 副腎皮質ステロイド薬がやや有効になります。副腎皮質ステロイド薬は発熱、皮疹などの炎症の軽減には有効ですが、脂肪萎縮ややせなどには無効です。長期大量の内服による成長障害、緑内障、代償性肥満、骨粗鬆症など弊害も多いのが問題となっています。アメリカのNIHのグループは、マイクロアレイによるmRNA解析から、STAT1発現が増強していることを見出し、IFN経路を阻害する治療を試みていますが、さまざまな生物製剤の投与報告がありますがこれといって奏功していないのが現状です

  

予後

長期的に疾患活動性は持続しますが、著効する治療法がないため予後不良です

一部の軽症例を除くと、繰り返す発熱・筋炎、発育障害、進行性の脂肪筋肉萎縮・関節拘縮などによりQOLが著しく低下するため重症例では若年での突然死もありえます。
 
疾患の典型例においては、以下の様な進行パターンに分類できます
軽症パターン:発達発育障害を認めず、萎縮・拘縮も軽度。発作時も全身状態が良好で、発疹も非露出部のみ。

重症パターン:低身長などの発育障害を認め、萎縮・拘縮も高度。発作時に倦怠感や筋炎、肝障害などを伴う。顔面など露出部の発疹が目立つ。

最重症パターン:早期より萎縮・拘縮が進行。心肺機能が低下し酸素吸入を要する。突然死するリスクがある。
   

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